医学部小論文頻出ワード『インフォームド・コンセント』

インフォームド・コンセントとは…

インフォームド・コンセント(informed consent)とは、手術などを行う際に、医師が予め病状や治療方針を分かりやすく説明したうえで、患者から同意を得ることです。

インフォームド・コンセントの歴史

インフォームド・コンセントの起源は1946年のドイツで行われた「ニュルンベルク裁判」にあります。第二次世界大戦中に行われたナチスの人体実験に対する厳しい反省を踏まえて、人体を用いて試験を行う際に、遵守すべき十項目の基本原則を定めたのが「ニュルンベルク綱領」です。

その後、1964年にインフォームド・コンセントの原則を世界医師会が第18回総会で「ヘルシンキ宣言」に盛り込み、欧米を中心に具体的内容が形成されました。

パターナリズムとは…

インフォームド・コンセントに相反するものとして、パターナリズムがあります。

パターナリズムとは、強い立場にある者が弱い立場の者の意志に反して、弱い立場の者の利益になるという理由から、その行動に介入したり、干渉したりすることです。日本語では家父長主義、父権主義などと訳されます

医療の場においては、「医者と患者の権力関係」がパターナリズムであると、1970年代初頭に医療社会学者のエリオット・フリードソンが指摘しました。著書の『医療と専門家支配』では、医療専門職を専門職のプロトタイプとしており、専門職が社会的支配力をいかに獲得し、クライアントに影響を及ぼしてきたかということに言及されています。医療現場におけるパターナリズムは「医療父権主義」「医療パターナリズム」と呼ばれています。

「医療パターナリズム」という立場は、患者を医療行為の対象としてのみ位置づける結果、患者に疎外感や自信喪失をもたらす、患者のQOLや個々の患者が抱える事情を無視して画一的な医療の提供になってしまうという弊害を招いています。さらに医療パターナリズムは、患者が自分自身の状況について自ら知り、自ら生き方・死に方を主体的に選択する権利を損なうものです。こうした理由から今日では、医療パターナリズムから脱却し、インフォームド・コンセントを主軸とした患者の権利を保障する医療を実現しようという方針が、医療において第一の原則となっています。